パトリツィア・ホテル
「ねぇ……」


私はあの日のことを思い出して。

ゆっくりと口を開いた。


「どうして、あの日……キスしたの?」


それは自分の中でもオフレコにしていたことだけれど……どういうわけか、迷わず口から出た。


すると彼は、夕陽に照らされて眩しそうに細めた目を私に向けた。


「そりゃあ、キスするってことは……俺が咲ちゃんを好きってことだよ。あの日もそう、言わなかったっけ?」


その言葉に……私の心臓はトクンと鳴った。


「あの日は花火の音で聞こえなかった。でも……本当に? からかってるとかじゃ……」

「俺はからかいであんなことしたりしないよ」


彼は真剣な瞳を私に向けて……その真っ直ぐな眼差しに、私の心臓の高鳴りはさらにヒートアップした。


「僕は……本当に、初めて会ったあの日から、咲ちゃんのことが好きで。一日も忘れたことがなかった。だから、咲ちゃん。もし迷惑でなければ……俺と付き合って欲しい」


彼の言葉を聞いて、私の心臓は激しく拍動して……だがしかし、頭の中は真っ白になってしまった。


(私……夢でも見ているのかな)


私の意識はフワフワと宙に浮き、何も答えることができなかった。

そんな私を見て、彼は微笑んだ。


「まぁ……今すぐに答えるのは難しいかも知れないけど。春の遠足が終わったら……返事が欲しい」


真っ白になった私は、彼のその言葉に、ただうなずくことしかできなかった。
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