パトリツィア・ホテル
(ほぅら……やっぱり、住んでる世界が違いすぎる)


セレブ男女の会話を聞きながら、私は深く溜息を吐いた。

絵に描いたようなセレブ男女のお話に、私らみたいな背伸びしてるだけの庶民がついていけるはずがない。

惨めな想いをするだけなんだ。



そんな卑屈な考えが脳内を支配し始めていた時、この新クラスの担任が入ってきた。




「皆さ〜ん、席に着いて下さい!」


若くて可愛らしい、女の先生。

いかにもナメられそうな先生だけど、流石に入学早々に逆らうような生徒はおらず、みんな、素直に席に着いた。


「私はこのクラス、一年C組の担任になった、高橋 奈々子(ななこ)っていいます。皆さん、よろしくね!」

いかにも大学上がり立てって感じの新人の先生。

並んで立つともしかしたら、私の方が大人に見えてしまうかも知れなくて。

いや……でも、私もついこないだまで中学生だったし。

いくらなんでも、それは思い過ごし……だと思いたい。



その時……脳内で一人ノリツッコミしてる私の耳に、浮かれた男子の声が入ってきた。

「よっ、ナナちゃん先生!」

どうやら男子の間では、高橋先生は『ナナちゃん先生』ってニックネームになったみたい。

ふと新宮くんの席を見ると、彼も口角を上げて上機嫌でナナちゃん先生を見ていた。
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