パトリツィア・ホテル
「咲、いいこと? 何も、そんな大物と結婚しろとは言わないわ。折角いい高校に入ったんだし、多少地味でも堅実にコツコツと、真面目に稼いでくれる男を捕まえなさいよ」

「う……うん」

「折角、見せ方によってはとびきりの美人に見えるように生んであげたんだからね!」


お母さんはそう言って、にっこりと私に微笑みかけた。


「はい、はい。見せ方によっては、ってのが余計だけどね」


私はなるべく平静を装い笑顔を返した。

でも……


(やっぱり、言えない……)


母に返す自分の笑顔が、少し引き攣ってしまった気がした。




今日もいつもと変わらない通学路では、彩林館高校の生徒達で賑わっていた。

一年生でももうすでに彼氏をゲットして、一緒に通学している子もちらほらといた。

そんな中……


「うーむ……どうやって切り出すかなぁ……」


私は、まさかの御曹司様とのお付き合いを家族にどう切り出すかで頭を悩ませていた。

彼氏ができたらすぐに報告しなさい、とお母さんには言われていて。

私もできれば、すぐにでも報告したかった。

でも……あまりにも身分違いの突拍子のない報告になってしまうので、何だか気が引けてしまうのだった。
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