カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
「……妊娠していないからですか?」
ーーえ?
彼女はポツリとつぶやいた。
今、妊娠と言ったか?
時間が止まったかのようにこちらの思考が停止し、「え」と短い言葉しか出なくなる。
「私が妊娠していないってわかったから、なにもしてくれなくなったんですよね」
質問の意図がわからない。しかし俺の秘密がなぜか彼女にバレている。勘違いの件がどこからバレたのか理解できず、焦りからすぐには返す言葉を見つけられなかった。
「そ、それは……」
「……最初から全部、勘違いだったんですものね。本当は、私のことなんて好きでもなんでもなかったんでしょうっ」
「な、菜々花さん、違う、そうじゃないっ」
「もういいです! なにも聞きたくありません!」
彼女はフラつく足もとで立ち上がり、俺を突き飛ばす要領で一目散にここから走り去る。
「待って!」
手を伸ばしたが捕まえられず、彼女は廊下を挟んだ自室に入って行き、俺の記憶する限りで初めて「ガチャン」とドアに鍵をかける音がした。