カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
「菜々花さん!」
すぐに体勢を立て直してドアに手の平をついてノックし、閉まっているとわかりつつもドアノブに手を掛けて上下に動かす。
もちろんドアは開かず、呼びかけても答えてもらえない。
しかしここで退いてはいけない気がする。誤解をといて、なぜ泣いているのか話を聞かなければ。
俺はドアを叩くことは止めるが、その場に立ったまま声をかけ続ける。
「聞いてくれ。たしかに、菜々花さんの病気の件を妊娠の話だと誤解したのは事実だ。本当はあの夜の記憶はなく、その後の会話で勘違いをしてしまって……」
明かしながら情けなくなるが、俺は情熱を込めて、中の彼女へ告げる。
「でも、菜々花さんを好きだという気持ちは変わらない。これは信じてほしい」
丁寧に選びながら言葉を発すると、それに煽られて俺の感情も高ぶっていく。本当に彼女が好きなんだ。遅すぎるが、この一件がきっかけで自分の気持ちに気づいた。
仕事中に俺を気にかけてくれた優しい菜々花さんへの想いは日々積み重なっており、自分が勝手に決めていた同僚という枠を取り払ってみれば、その気持ちは疑う余地のない特別な感情だとわかった。