カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
デザートのお皿に、スプーンがカランと落ちる。
『菜々花さん』
全然、違う。
隼世さんが名前を呼んでくれるだけで、私の胸はときめきで満たされ、体がジンと熱くなったのだ。
まっすぐな心が透けて見える瞳に見つめられ、震えるほどの緊張が伝わって、今にもふたりで溶けてしまいそうな痺れを感じた。
私はーー。
「ほ、星野さん? すみません……泣くほど嫌でした?」
大粒の涙がポロポロとこぼれ、白いテーブルクロスにじわりと落ちる。
焦りを浮かべて私に手を伸ばした竹澤さんに「違うんです」とつぶやき、自分のスカートへと目線を落とし、そちらへ涙を落とした。
どんどん溢れてどうにもならず、スカートのポケットに入れていたレースのハンカチを取り出し、目に押し付ける。
「竹澤さんのせいじゃなくて、私、私っ……」
困らせているんだから、すぐに泣き止まなきゃ。そう思うのに、もう気持ちが止まらない。