カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
嵐のようだった佐藤さんが去り、ラウンジはゆったりとした静けさを取り戻す。私は隅に置けない女だと聞こえたのか、隣のテーブルのカップルはちらちらと私を見ている。
しかし今の私の心は寂しさでいっぱいで、周囲の目など気にはならない。
「すみません星野さん、長くなりました」
添えられたアイスが溶けきった頃、竹澤さんが戻ってきた。
「いえ。お仕事、大丈夫なんですか?」
「ええ。いつもこうですから。ああ、申し訳ありません、デザート召し上がってください」
座りながら手のひらで促される。
うなずいて最後に残された小ぶりのスプーンを持ってムースをひと掬い口へ運んだが、まるで味がしなかった。
ふと前方に目を戻すと、竹澤さんが頬杖をつき、こちらを見つめている。
「今日はよかったです。星野さんといるとなんだか落ち着きます。もしよければ、またふたりでどこか行きませんか」
「……え?」
「星野さん、というのはなんだか仰々しいですね。菜々花さん、と呼んでもいいですか」