カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~

キスをしたくてたまらないが、背後に斗真がいるためできない。はやくどっかへ行けと念じるものの、ここは奴の部屋だと思い出した。

「菜々花さんは連れ帰るぞ。総務部へ帰還すると即日処理をしておいてくれ」

「はあ、星野さんがいるとなにかと便利だったんだけどなぁ」

俺が菜々花さんを支えながら立たせ、隣で斗真がため息をついたとき、今度は、マネージャー室のドアの外から新たな声がした。

「斗真! いるか! 顔を貸せ!」

ヤカラかと思うその声に、目の前の斗真は「ゲ、父さん」と顔を歪める。

それに聞いた菜々花さんが「え、社長さん?」と焦りだし俺から離れようとするが、俺はそれを許さず、肩を強く抱き寄せた。

俺をここへ入れたときに鍵を開けていたせいで、斗真がドアを開けなくとも、その声の主の俺たちの父さんは「開けろと言っとるだろ!」とドスのきいた声を上げ、道場破りのごとく中へ入って来たのだったーー。
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