カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
「違うよ父さん! そのときは兄貴が女に騙されてるんだと思ったから、会社の未来のことを思って遠ざけただけでーー」
「それが余計だと言っとるんだバカモン!」
バチン!と破裂音がしたと思ったら、お父様の素早いビンタが炸裂し、斗真さんの頬が真っ赤に染まった。
「痛ってぇ!」
「なにも真実が明らかになっていないのにお前ごときが社員を罰する資格があると思うのか! 思い上がるな! 社員の言い分を聞かずして方針を決めてはならん!」
言っていることは誇らしく社員として大賛成だが、いかんせん風貌が堅気の人間ではないみたいで、怖すぎる。
これが、ベビー用品メーカーの社長なのか……。圧倒されてゴクンと唾を飲み込んだ。
「お前は昔から兄貴兄貴と! 隼世に悪い虫が付かんようにと余計なお節介ばかり焼いてきたようだが、いい加減、兄離れをしろ!」
「なっ、なっ……ち、違う! そんなんじゃない!」
本人の前でブラコンを暴露された斗真さんは、まるで茹でられたタコのように真っ赤になってしまう。
「そして隼世!」
お父様はグルンとこちらへ回れ右をし、ピカピカに磨かれた味のある革靴で迫ってくる。
隼世さんは一歩も動かずに真剣な顔で見つめ返しており、私は腕の中でその顔を下から眺めながら、見惚れていた。
しかしーー。
「お前もまったく修行が足りとらん!」
バシーン!とさらに大きな音がすぐそばで鳴り、私が驚いて伏せた顔を戻すと、凛とした隼世さんの顔の右半分が、真っ赤になっていた。