カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~

ベッドから下りてみる。カーペットに足がつくと、百八十センチの身長で部屋の真ん中に立ち尽くし、昨夜の記憶を呼び起こした。

そうだ、星野(ほしの)さんだ。

彼女が酔った俺を介抱してくれていた。肩を支えてもらいながら一緒にタクシーに乗ったところまで覚えている。……で、俺はタクシーでなぜ自宅ではなくホテルへ来たのだろう。

トン、と黒い靴下を履いた足先になにか当たり、目を落とすと、木で出来たコップ型のゴミ箱があった。中にはティッシュが山盛りになっており、ゾッとする。

続いてベッドに目を戻し、またひとつ不自然なことに気づく。このベッドはダブルベッドだ。となると、ここはひとり部屋ではない。

チェックインしたとき間違えたか、あるいは、その時点ではひとりではなかったか。……じゃあ、誰がいたというんだ?

胸騒ぎが大きくなっていく。まさかな、と浮かんでくる仮説を頭の中から消し去るのに、この部屋の妙な痕跡に惑わされ、疑いが募っていく。

最後に見落としていたサイドチェストに目をやり、そこに置かれたメモ用紙を目の当たりにすると、俺はその場に崩れ落ちた。

【おはようございます。私は先に帰ります。昨夜のことは秘密にしてください。 星野】

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