カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~

女性陣に見送られ、代表して渡辺さんにタクシーの後部座席へと押し込まれる。

彼女はケラケラ笑って「星野さん! 課長に襲われたらこうするのよ、こう!」となにもない空間をパンチし、課長への撃退方法を伝授してくる。

ドアが閉まっても騒ぎは収まらない。
そっちは残った社員がなんとかしてくれると祈るしかない……。

完全に酔っぱらいに絡まれただけの私だが、座席に埋もれて荒い息をしている課長が心配で「大丈夫ですか?」と声をかけた。
声を聞くため、彼の唇に耳を寄せる。

「……ハァ、ハァ」

ダメだこりゃ……。

「どちらへ行きます?」

運転手さんに前を向いたまま尋ねられる。そういえばどこへ行けばいいのかわからない。たしか、課長の家は目黒だと言っていたのを思い出した。

「とりあえず目黒方面へお願いします」

「はい」

車が動き出す。

再度ちらりと課長の様子を確認すると、じわりと汗を滲ませ、色っぽく眉を寄せている。
いつも困った顔をしているときとのギャップがたまらず、男らしさとセクシーさを兼ね備えた余裕のない顔つきにドキドキする。

これはこれで、ちょっと役得だったかも。
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