カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~
「か、か、課長……」
「……お世辞じゃ、ない」
「えっ……」
その台詞は私にしか聞こえない小さな声だった。
どういうつもりだろう。フォローだろうか。ドキドキするからそんなことを言わないでほしい。
酔ってるのはわかっていても、綺麗な顔をこんなに近づけてささやかれたら嫌でも体が熱くなる。
どうしよう、くらくらしてきたーー。
そこへ部長がのっそりと「そろそろお開きにしましょうか」と号令をかけにやって来て我に返り、「はい!」と返事をした。
パートさんたちも私たちをいじめて満足したのか、各々荷物を持ってキャアキャアと立ち上がる。
私も課長を支えながら立ち上がり、ふたり分の荷物を反対の腕にかけた。
「星野さん。タクシー呼んだから、隼世課長をちゃあんと自宅まで送ってあげてね」
佐藤さんがお酒で真っ赤になった顔でおもしろそうにそう言う。
「え、私がですか!?」
「ほかに誰がいるのよぉ。課長が奥さんにご指名してるんだから」
背中をバンバンと叩かれ、課長ごとぐらぐらと揺れた。
皆酔っぱらって、課長を愛でる会から若者をからかう会へと切り替わっている。かといって潰れた課長をそのままにするわけにもいかない。どうすればいいか困って部長を見たが、彼はちょうど迎えに来た奥さんの車に乗りながら、「じゃあよろしくねー」と言って呑気に帰って行ってしまった。
皆、自分勝手すぎる……。
そして佐藤さんが呼んだタクシーが、私と課長の前に停まる。