カタブツ御曹司と懐妊疑惑の初夜~一夜を共にしたら、猛愛本能が目覚めました~

最後に課長の席の前で一礼しながら「お先に失礼します」と声をかけ、オフィスの出口へ足先を向けた。

まだ、なにか言いたそうだった。

背を向けて一歩一歩課長から離れていく。なぜだろう、心臓がうるさく鳴っている。
明日が来るのが怖い私は、課長に「がんばって」と言ってもらいたいのかもしれない。うしろ髪ひかれる思いで、帰ろうとしたときーー。

「……星野さん。この間の、ホ、ホ、ホテルでの件、なんですけど」

ピタリと足が止まり、緊張の息が抜けるように口から漏れる。

私が不安なとき、なぜ課長はちょうどよく声をかけてくれるのだろう。
申し訳ないと思いながらも甘えてしまいたくて、「はい」とつぶやいて振り返る。

「えっと……。その後、どうですか……? 体調も優れないようですが」

多くを聞かない優しい言葉にホッとした。現状を確認されているのが、ただただうれしい。
体のことを気にしているのは私だけではない、と元気づけられる。
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