身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~
「俺は……ツボミのためなら……何をしてでもこの命を生かす。……もちろん、桜門や文月さんを使ってでも」
「俺も自分の願いのために依頼を受けているんだ。お互い様だろう?」
「………文月さんもそうなのか?あの人も………自分の願いのためなのか」
「………」
そんなはずはない。
桜門が言葉巧みに彼女との取引を持ち掛けたのだ。
文月の気持ちを知りながら。
答えのない桜門を白銀は、濁った瞳で見つめた。
たくさん話をしたため、疲れたのだろうか、今にも目を瞑ってしまいそうだったが、ジッと桜門を見ていた。
「おまえは、それでいいのか?」
いいって?
よくない。
いいはずなどないだろう。
そんな事をおまえに言われたくない。
好きな人形のために、文月は…………。
そこまで心の中で叫んだ桜門だが、そこで考えるのを止めた。
もういい。
「もう………俺は疲れたんだ」
そう言葉を落とした桜門は気だるげに手を挙げて、白銀に手の平を向けた。
すると、桜吹雪が白銀の体を包み始めた。
その景色を見て、白銀はにっこりと満足そうに微笑み、目を瞑った。そこから、涙が流れてくる。まだ、生きているという証拠の雫が。
「桜門、ありがとうな。あの子によろしく。ツボミ、いつまでも愛している」
その言葉は、冬が積もる時のように静かで優しいものだった。
桜門はその場から離れると、その瞬間にけたたましい機械音が病室に鳴り響いた。