身代わり依頼は死人 桜門へ ~死人の終わらない恋~





   ☆☆☆



 桜門が身代わり依頼を遂行している間、文月は病院の待合室で待っていた。姫白の時のように、誰かが苦しむのを直視したくなかった。見ていない時間も、依頼は行われている。怖いから逃げてしまうのはよくないとわかっていても、文月の足は病室には向かってくれなかった。

 待合室には、白銀の会社の人達も待機しており、文月に話を掛けてくれた。
 白銀は早くに両親を亡くしており、ドール作りだけが生きがいだったため友人もほとんどいなかったそうだ。会社の人達としか話もせず、1番大切にしていたのはその人たちでもなく、ドールだと言う。けれど、白銀はとても幸せそうだったと話をしてくれた。社員にとっては、神様のような存在であるらしく、逸材なのだそうだ。白銀の話を、とても誇らしげに文月に話してくれるのだ。
 白銀はドールだけではなく、その純粋な心とドールに対する姿勢と知恵でたくさんの人の憧れの存在なのだと知ることが出来た。

 そして、最後には「こんなに若いのに。どうして神様は白銀さんをつれていこうとするのでしょうか」と悔しさで表情を曇らせていた。



 ちょうど、会話が途切れた頃、待合室に人影が現れた。
 けれど気づいているのは文月だけだった。他の人達は誰一人として、そちらの方を見ていない。


 「終わったぞ」

 

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