政略夫婦の授かり初夜~冷徹御曹司は妻を過保護に愛で倒す~
「待ってくれ!」

 後を追ってきたのは敬一だった。足を止めた私たちのもとへ興奮気味に駆け寄ってくると、敬一は目をキラキラさせて弦さんを見た。

「さっきのお義兄さん、最高にかっこよかったです。姉さんを守ってくれてありがとうございました」

 あんなに弦さんに敵意を剥き出しにしていた敬一が深々と頭を下げたものだから、私と弦さんは戸惑いを隠せない。
 敬一は頭を下げたまま続けた。

「今後も姉さんのことをよろしくお願いします。絶対に姉さんのことを幸せにしてくださいね」

 そう言って顔を上げた敬一は、ニッと白い歯を覗かせた。屈託ない笑顔に弦さんは面食らうが、すぐに表情を崩した。

「敬一君もありがとう。俺が未来と出会うまでずっと彼女のことを守ってくれて。……今後は俺が全力で守る。世界で一番幸せにすると約束しよう」

 弦さんの言葉を聞き、敬一はホッとした様子。すると今度は私を見て目を潤ませた。
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