同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「優磨さん、お待たせしました」
泉さんはそばに立つ私に軽く会釈するから私も思わず「どうも……」と挨拶してしまう。
美麗さんは「なんだー、泉ちゃんが来たの?」と以前から泉さんのことを知っているようなことを言う。
「ちゃん付けで呼ばないでください」
泉さんは美麗さんに淡々と返事をする。優磨くんは泉さんに困った顔を向けた。
「きちんと監視するよう父に言ってください」
「この人は監視を付けても無駄です。どうやっても脱走するんですよ」
泉さんは無表情で優磨くんに答えた。
「美麗は好きなときに行きたいところに行くの」
美麗さんは綺麗な顔でニヤリと笑う。
私には三人の会話が全く理解できない。けれど泉さんが「美麗さん、帰りますよ」と言うと、あれだけ騒いでいたのに美麗さんはあっさりと車に乗った。
「泉さん、こんなこと頼んですみません」
優磨くんが申し訳なさそうにすると泉さんは「美麗さんには慣れていますので」と返す。
「波瑠のことは父にはまだ内緒でお願いします」
「私は構いませんが……」
「美麗は好きなときに好きなことを話すから」
後部座席で美麗さんはニコニコと言うけれど、優磨くんに「美麗」と低い声で呼ばれると黙ってしまう。
「じゃあねハルちゃん」
美麗さんが窓から手を振りながら車は行ってしまった。
「波瑠」
呆気にとられて固まる私は優磨くんに呼ばれて我に返る。
「失礼なことを言ってごめん」
「ああ……うん……」
さっきの美麗さんの発言のことだろうか。あんな美人にけなされてもその通りなので何も言い返せない。
「あの人がピアスの持ち主なんだね」
「うん」