同期の御曹司様は浮気がお嫌い
「泉さんは優磨くんにも美麗さんにも気を遣って大変ですね……」
美麗さんに聞かれないように小声になる。
「いずれ私は優磨さんの秘書になりますから」
ああそうか、優磨くんが将来社長になれば泉さんはそのまま秘書ということになるのだろう。
「封筒、よろしくお願いします」
「はい。ありがとうございました」
「波瑠ちゃん、仕事中の優磨を癒してあげてねー」
「え?」
どういう意味かと聞く前に車は走り出した。見えなくなると正面玄関から会社に入った。
受付の女性が私に向かって頭を下げる。
「あの、城藤さんに書類を届けに来たのですが……」
「何課の城藤でしょうか?」
「えっと……何課……?」
「弊社には城藤が複数名おりますので……」
それもそうだ、ここは『城藤不動産』なのだから。城藤は他にもいるはずということを失念していた。ここには優磨くんのお父様もいるかもしれないのに。所属を聞いていなかったことが悔やまれる。
「城藤優磨さんです……」
「かしこまりました。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」
「安西と申します。あの、書類は秘書の泉さんからお預かりしています……」
「かしこまりました。お待ちくださいませ」
受付の女性は受話器を取ると内線をかけ始める。
「一階受付です。城藤部長宛に安西様が下でお待ちです……はい……」
優磨くんって部長だったの? それってすごくない?
全く知らない優磨くんの肩書に驚く。彼は仕事のことは私に何も言わないのだ。
「……かしこまりました。失礼いたします」
受話器を置いた女性は再び私に顔を向けた。
「エレベーターで25階に上がり、目の前のドアを開けていただくと部内の者がご案内致します」
「はい。ありがとうございます」