同期の御曹司様は浮気がお嫌い

着信拒否しようと思っても優磨くんの会社に何を言われるか不安でいちいち応答してしまう。その度にお金の要求に応えるのは無理だと言い返すことを繰り返している。

お風呂に入っている間にも電話がかかってきていたらしく、優磨くんに「電話があったみたいだよ」と言われると慌ててカバンに入れたままのスマートフォンを確認する。
着信画面を優磨くんに見られてしまっただろうか。カバンから出すようなことをしないと思うけど、下田くんから連絡があったことを知られたくない。

「どうしたの?」

「ううん! なんでもない!」

着信履歴には下田くんの名前がある。LINEで『いい加減無視するなよ』とメッセージが来ている。
このまま無視していたら下田くんはもっと怒るだろう。優磨くんの会社に変なことを言われたら仕事に影響が出てしまう。私のせいで……。

吐き気を感じて洗面所に引き返す。

「うっ……おえっ」

胃液が逆流してくる気がする。

「波瑠?」

驚いたのだろう優磨くんは洗面台にもたれる私の背中を摩る。胃が不快なだけで実際には吐かなかった。

「大丈夫?」

「ごめっ……ごめんなさい……大丈夫……」

「体調悪い?」

「ううん、大丈夫。何か変なもの食べたのかも……」

「俺も波瑠と同じの食べたけど」

「じゃあお昼ご飯かな……はは……」

何とか誤魔化したけれど優磨くんはまだ不安そうな顔をしている。

しっかりしなきゃ。優磨くんに心配かけないようにしなければ。
でも下田くんは自暴自棄なんかじゃない。本気で私を脅している。一体これにどう対処しろというの?










慶太さんの会社で雇用契約を交わすために新店舗となるテナントに行った帰り、またも下田くんから電話がかかってきた。

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