副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~

 宇宙はそっと、涼花の頭に手をあてた。


(助けて…誰か…)

 助けを求める声が聞こえる…。

(…誰? …私…誰? …)

 悲痛な声が聞こえてきて、冷たい空気を感じる…。

(君は今日から北里涼花。大丈夫、心配しなくていいよ)

 どこからか優しい男性の声が聞こえ来る…。



 ハッと、涼花が目を開けた。

 目の前に宇宙の胸があり、驚いてサッとよけた涼花。

「ご、ごめんなさい…」

 さっきとは違い、いつものシレっとした涼花に戻っている。

 宇宙はフっと笑った。


「顔洗って来い。朝ごはん用意する」

 
 言われた通り、涼花は洗面所に向かい歯磨きと洗顔を済ませた。


 顔を拭いて鏡を見た涼花は、ため息をついた。

「私…なんか言ったのかな? …」

 
 どうやら涼花は何も覚えていないようだ。
 目の焦点が合っていなかった事もあり、どうやら無意識で言っていたようだ。




 涼花がリビングに戻って来ると、朝食が用意されていた。

 温かいご飯と味噌汁。
 卵焼きと焼きのり、そして美味しそうなウィンナーが焼いてあった。

 シンプルな和食に、なんとなく喜びを感じた涼花。


 お箸も赤い花柄の可愛い感じのものが用意され、お茶碗もピンク系のオシャレな柄。
 湯呑もお茶碗とお揃いの絵柄だった。


 ご飯の炊き具合も丁度良く、お味噌汁は合わせ味噌でワカメやネギや豆腐やあげ、そしてホウレンソウが入っていた。
 具沢山のお味噌汁は、しっかり味が染みていてとても美味しい。
 卵焼きは味が付いていて、ちょっと甘めだった。
 ウィンナーも高級品のようでパリッとして、とても美味しい。


 朝食を食べると、涼花の表情も柔らかくなっていた。

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