副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
お昼になり。
今日は涼花はお弁当を持ってきてカフェテリアで食べていた。
カフェテリアは社員食堂でもあり、お弁当を持ってこない人が食券を買って食べる事もできる。
日替わりランチもあり、結構人気である。
カフェテリアで、一人でお弁当を食べている涼花。
バランスが取れているおかずと、おにぎりをゆっくりと食べている姿はとても上品である。
お茶も水筒に持ってきている。
一人で食べている涼花の傍に、有香が熱いうどんを運びながら歩み寄って来た。
社員食堂で熱いうどんを注文して、持ってきている有香。
涼花の傍に来ると、ニヤッと怪しく微笑んだ有香。
バシャッ!
突然、涼花の傍を通り過ぎるとき、有香はうどんをひっくり返した。
「キャッ! 」
熱いうどんのつゆが、涼花にかかってしまった。
「あら、北里さんいたの? ごめんなさいねぇ」
わざとらしく謝る有香だが、悪いとは思っていないようで、口元が笑っていた。
カフェテリアにいる他の社員が、何事かと振り向いていた。
「あんまり存在感ないから、気づかなくて。うっかりこぼしちゃった。本当にごめんなさいねぇ」
内心は笑っている有香だが、表面上で謝っているようだ。
涼花はハンカチで拭き始めた。
すると…。
「大丈夫か? 火傷していないか? 」
慌てた声で駆け寄って来たのは宇宙だった。
濡れたタオルを涼花の顔に当ててくれて、汚れてしまった涼花の服を隠すためにジャケットを脱いで羽織らせた宇宙。
「すぐに着替えろ」
スッと、涼花を抱きかかえ宇宙は走ってカフェテリアを出て行った。
「な、なに? なんで副社長、あんな女に優しくしているの? 」
有香は信じられ顔をして茫然と立っていた。
「怖いわね、今のってわざとじゃないの? 」
「うん、だって急にひっくり返したわよね」
「火傷していないかしら? 」
見ていた社員がヒソヒソと言い始めたのを耳にして、有香は面白くない顔をしてさって言った。
涼花はそのまま医務室に連れて来られた。
幸い服が厚手だったことと、スラックスも厚手で火傷は免れた。
顔にもかかっていたが、濡れたタオルですぐに拭いたことからちょっと赤くなった程度で問題はなかった。