副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
忘れてもいいから…

「…叔父様…」
「隣り、座るね」

 紳士はそっと涼花の隣に座った。

 この男性は涼花の母の弟で、東条秀臣(とうじょう・ひでおみ)。
 東条財閥の党首で、銀行頭取である。
 駅前の土地は秀臣名義のものばかりで、大手ショッピングモールにも土地を貸している。
 病院や遊技場などにも沢山土地を貸していて、リッチビレッジも秀臣名義の土地が複数ある。
 資産だけでも総額数億はあると言われていて、財産額は相当なものだと言われている。

 結婚して子供がいたが、5年前に事故死して、妻も10年前に病死している。
 今は涼花を引き取っているようだ。



 秀臣は珈琲を注文した。

 注文した珈琲が届くと、ゆっくり飲み始める秀臣。


「どうだい? 宗田ホールディングは」
「はい…なれない秘書は大変ですが。…それなりに、順調に仕事はできております。…今のところ、忘れる事はありませんので大丈夫です」

「そうか、それなら良かった。でも、数日前は大変だったそうだね。私が出張でいないときだったが」
「はい…でも大ごとにはならなかったので」
「相手は小林有香だそうだね」

「はい…」
「彼女はとても厄介な人だよ。かなりしつこくて、思い通りにならないと攻撃に出てくる。やり方は卑劣だよ」

「そうですね。あやうく、火傷するところだったので」
「でも彼女、さっき事故に遭ったようだね」

「え? 」
「あの大踊りで、車に引かれて病院へ運ばれたそうだよ」


 まさか…
 あの時?

 ちょっと青ざめた涼花。


「これで2人目だね。病院に運ばれたのは」
「…はい…」

「次に動き出すのは。…彼女だろうね…」
「そうだと思います」

「病院に運ばれた2人は、重体だから動けないと思うけど。次の彼女は、相当な妄想癖がある。気を付けた方がいいよ」
「分かりました」




 秀臣と別れた後、涼花は約束通り宇宙の指示したレジデンスに来た。

 部屋番号を押すと

「どうぞ」

 と、優しい声て宇宙がロック解除してくれた。

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