副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
何となく重たい気持ちでエレベーターに乗った涼花。
会いたくない気持ちではないが、どうしてもセフレと言われた事が気にかかっている。
宇宙は既婚者。
現在重体で入院している奥さんがいる。
これは間違いなく不貞行為に値する。
社長に見つかれば、そこから大きな問題になり、解雇されてもおかしくない。
いくら宇宙が何を言っても状況的に自分が不利…。
そんな事を考えながら涼花は部屋の前まで来た。
玄関のドアを見つめて、涼花は何かを決意した目を向けた。
チャイムを鳴らすと
「入ってきて」
と宇宙の声がインターフォン越しに聞こえた。
ドアノブを回すと鍵が開いていた。
言われた通り涼花は中に入って行った。
リビングに向かうと、食卓に美味しそうな夕食が用意されていた。
ジューシーなサーロインステーキが、ブランド品と思われるお皿に乗せられ、サラダ用のお皿には新鮮なレタスとポテトサラダ。
そして暖かいコーンポタージュスープ。
グラスには赤く綺麗なスパークリングワインのような飲み物が用意されていた。
「来てくれて有難う」
いつもの笑顔で迎えてくれた宇宙。
「お腹すいているだろう? 夕飯作ったんだ、先に腹ごしらえしようぜ」
そう言って涼花の手を引いて、椅子に座らせてくれた宇宙。
目の前に並んでいる夕食を見ていると、先ほどまで抱いていた不安がどこかに消えてしまった涼花。
「これ、ノンアルコールのスパークリングワイン。とっても美味しいから、飲んでみろよ」
「はい…頂きます…」
アルコールが苦手な涼花は、ちょっと舐めるようにワインを飲んでみた。
口の中に爽やかな炭酸が広がり、甘い味が優しく広がってゆく。
アルコールの味はしなくとても飲みやすい。
「…美味しいです…」
素直に答えた涼花。
「口に合ったようで良かった」
お肉も食べ始めると、とても柔らかくジューシーでお店で食べるステーキより美味しく感じた。