副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~
涼花は気持ちを落ち着かせた目に、駅前のカフェにやって来た。
電車の待ち時間などで使われるオープンカフェ。
今はちょっとあだ寒いため、外の席は利用されていない。
涼花は窓際に座ってココアを飲んでいた。
ココアを飲みながら、信号待ちで誰かに背中を強く押されたことを鮮明に覚えている。
押されてそのまま大通りに突き出されそうになった…。
車に引かれると思ったが、郷に助けられた…。
これは偶然なのだろうか?
涼花はちょっと恐怖を感じた。
鞄から手帳を取り出し、そっと中を見る涼花。
手帳の中には、涼花の両親らしき人の写真がある。
白衣を着てメガネをかけた渋い中年の男性と、看護師の可愛らしい女性。
涼花と似ている部分もある2人。
「お父さん…お母さん…。あと一人だけど…どうしたらいい? 」
写真に向かい呟く涼花…。
ポン…
涼花の肩にそっと手を置く者が…。
ハッとして涼花は振り向いた。
そこには、シルバーの高級スーツに身を包んで、スッと背筋を伸ばした50代くらいの紳士が立っていた。
背が高くスラっとしている紳士は、優しい微笑みで涼花を見ている。