副社長が私を抱く理由~愛と殺意の先に~


 そっと唇を離して風香を見つめる宇宙。
「俺、風香がいないとダメだから…」
「私も…貴方がいないとダメです…」
「もう離れないでくれよ」 
「はい…」
 見つめ合うと2人はそっと微笑んだ。



 思い出せない昔を風香は今では思い出すことが出来るようになった。
 記憶障害と言われた風香だが、今は忘れる事もなくなっていた。







 暑い夏が過ぎて、寒い冬がやってくる…。
 
 寒い冬の真っただ中の1月。

 無事に宇宙と風香の子供が産まれた。


 初めの予想通りの双子の赤ちゃんで、男の子と女の子。
 お兄ちゃんには柊(ひいらぎ)、妹には楓(かえで)と名付けた。

 柊は風香に似ていて、楓は宇宙に似ている。
 
 まだ生まれて間もない2人は、とても輝く天使である。


 風香が退院してレジデンスで子育てが始まり空斗は毎日のように仕事の帰りに寄っている。宇宙の母の柚子も2人一度には大変だろうと、手伝いに来てくれている。

 柚子は宇宙と似ていて、柔らかい感じの女性でとても優しく風香を助けてくれる。



 柊を抱いて風香が外を見ている。
「もうすぐお父さんが帰ってくるわよ」
 スヤスヤと眠っている柊。
 起きていると風香に似ているが、眠っている顔は宇宙に似ている柊。


「ボンギャー」
 楓の泣く声が聞こえてきた。


「あらら、楓ちゃん起きたのね」

 手伝いに来ていた柚子が、楓を抱き上げた。

 長い髪を後ろで結って上品な顔だちの柚子。もう70近くになるが、とても若々しくシワも少ない。


 楓のオムツ変えてくれた柚子。

「あら? 柊はまだ起きないの? 」
「そうですね…」

 と、パチッと目を開けた柊が泣き出した。

「あら、起こしちゃたかしら? 」

 風香は柊のオムツを変え始めた。


「双子は泣くのも一緒だから大変ね。でも、大きくなると協力し合ってくれるから結構楽よ」
「そうなんですね」
「宇宙も双子だったから、よく妹があれこれお世話していたわ」
「妹さんが? 」
「そうなの。宇宙の方がお兄ちゃんなのに、妹の輝歩の方がしっかりしていて。まるでお姉ちゃんみたいだったわ」
「そうなんですか…」
 
 

 お腹いっぱいになり、柊も楓も眠ってしまった頃。
「ただいま」
 宇宙が帰って来た。


「お帰りなさい。今日もお疲れ様」
 玄関に出迎えに行った風香。
「ただいま」
 宇宙はギュッと風香にハグをした。
「柊と楓は? 」
「今寝ちゃったところよ」




 リビングに来た宇宙は、ベビーベッドで寝ている柊と楓を覗いた。
「2人もぐっすりだな」
「そうね」


「さぁ、2人も。今のうちのご飯食べましょう」
 食卓に夕食を準備してくれた柚子。



 3人で食べる夕食。
 その傍らで眠っている柊と楓。


 宇宙の夢だった自分城で子育てをする願いが叶い、そして、心から愛する人と幸せな家庭を築くことが出来た。

 離れていた5年間。
 すれ違っていた時間そして忘れていた時間。
 そんな空白はもうすっかり埋まってしまった。
 治らないと言われた風香の記憶障害も、子供が出来ないと言われた事も。
 強い愛の下では大逆転している。


 この幸せが永遠に続きますように…。


 副社長が私を抱く理由…END
 
 
 
 


 



 
 

 
 




 




 


 

 
 



 

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