エチュード〜さよなら、青い鳥〜

本選






「本選終わったら、何がしたい?」

本選当日。
会場に向かう車の中、緊張した面持ちで後部座席に座っている初音に、四辻は優しく話しかけた。


「そうね。まだ、二人でお出かけとかしたことないから…クラッシックコンサートとか行きたいな。ミュージカルとかもいいかも。四辻さんが一緒だと思うと、つい音楽三昧のお出かけばかり思い浮かぶわ」

「それ、最高!楽しみだ」

「そう言ってくれると思った。
音楽は、全ての人に等しく降り注ぐ、万国共通の幸せ。
さぁ、今日もみんなを幸せにするよ。
音楽を、ピアノを、もっと好きになる。
四辻さん、楽しもうね」


あぁ、大丈夫だ。
きっと、今日も素晴らしい演奏ができる。彼女の笑みにそう確信した。





「じゃ、行ってくる。お父さんとおじい様をよろしくね」

会場の前で、初音と握手をした。彼女が出場者入口に入っていくのを見届けてから、四辻は車を走らせ、アリオン本社に向かう。
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