エチュード〜さよなら、青い鳥〜




アリオンの通用口前に着いたのは、会長に指示された時間の20分前だった。

思ったより、早く着いた。

四辻は、車を駐車スペースに止めて車を降りた。

今日の休みを取る為に昨日遅くまで仕事をしたせいか、体が疲れている。手を上に上げて体を伸ばすると、固まっていた体がバキバキと音を立てた。

疲れてはいるが、これから初音のピアノが聴けると思うと楽しみで仕方ない。しかも、場所は1,500人近く収用できる大きな『一条文化ホール』。国際的にも最高レベルの音響空間と名高いホールだ。
そこに初音のピアノが響き渡るかと思うと、ワクワクする。



「…涼」


その時、名前を呼ばれた。
かつて、名前を呼ばれるのが当たり前だった人の声で。

通用口から姿を見せたのは、福岡陽菜だった。


< 103 / 324 >

この作品をシェア

pagetop