エチュード〜さよなら、青い鳥〜
でも。

彼が好きなのは音楽だ。たぶん、初音が奏でる“音楽”が好きなのだ。
“アリオンの丹下初音”が好きな人達みたいに、初音自身を好きじゃなかったのかも知れない。


ーー私自身の魅力って、やっぱりないのかな。


二人で一緒に過ごした時間、楽しかったのは音楽があったからなのかもしれない。

ーーあんな事、言わなきゃ良かった。

初音は、棚から楽譜を選び、ピアノに置いた。

心の中がぐちゃぐちゃだ。こんな時は、何も考えずに弾くだけで精一杯になる難しい曲がいい。
指を酷使して、ピアノを叩きつけて、胸に渦巻くドロドロを吐き出してやる。





ピアノ室のドアは、わずかに開いていた。
初音はそれに気づかず、演奏を始める。


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