エチュード〜さよなら、青い鳥〜
「元気そうじゃないか。ディアナから近況は聞いているよ」

マーシャはクラウゼ教授をひとにらみしてから、ぶっきらぼうに答えた。

「おかげさまで。私は忙しいの。日本には行かない。じゃあね、ハインリヒ」

「待ってくれ、マーシャ。
実は私は、この演奏会を最後に日本を離れて、ドイツに帰ろうと思っているんだ。
最後に華を添えてはくれないか?」

「イヤよ。なんで、私が」

「どうしても君と演奏したいんだ。だって昔から私の夢は、最高のピアニストとなった君と一緒に、最高の音楽を奏でることだったから。年齢的にも、もうこれが最後のチャンスだ。
頼むよ、マーシャ」


最高のピアニストと最高の音楽を。音楽の神様と称されるほどの指揮者、ヘンリー・クラウスにそこまで言われると、流石のマーシャも心がぐらついているように見えた。


「ピアノは2台用意するから、マーシャとディアナで。モーツァルトをやろう。
最初で最後、私の大切な人達と最高の音楽を奏でたいんだ」



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