エチュード〜さよなら、青い鳥〜
だが、初音の顔に笑みは無かった。


「あなたがなりたいのは、私のマネージャーと涼音の父親?
…四辻涼さん。不採用です。
私はあなたのおかげで、自分を変えることが出来てピアニストとしての今がある。
あなたには、そんな力がある。私の手伝いではなく、あなた自身の力で、最高の音楽を多くの人に届けてほしい。
父親として涼音に会いたいときは、いつでもどうぞ。

以上で話は終了」


初音はそう言ってドアを指差し、涼に退室を促す。

「ハハ、今度は俺が不採用になった。皮肉なもんだ」


涼の脳裏に、まだ学生だった初音を人事担当者として面接した日のことが思い浮かんだ。
初音の放った言葉は、あの日涼が発言した言葉が散りばめられ、まさに立場が逆転していた。


「俺は諦めない。これからドイツ語を覚えて、営業スキルも身につける。
充分に準備して必ず、君の信用を得て仕事を任せてもらえるように努力する。
少しずつ信頼関係を築いて、俺にしかできない自分自身の力で、俺が最高だと思う音楽を多くの人に届ける仕事をするから」
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