いつか咲う恋になれ
「……タイミング(わる)。忙しくてケーキ持っていけないから、下まで取りに来いって」

「そ、そうですか」

二人の間に微妙な沈黙ができる。すると真尋先輩が立ち上がって私を見た。

「ちょっと下まで行ってくるから待ってて」

優しい表情で私の頭をポンとすると、さり気なく私の頬に軽くキスをしてきた。

そして部屋には私一人になる。色んな事が起きすぎて、頭から煙が上がるようにプシューっと力が抜けた。

どうしよう。私、さっきのセリフの続きを期待してていいのかな。

それより真尋先輩が戻る前に顔の熱を下げなきゃ。私は手でパタパタと仰ぎ顔を冷やした。

真尋先輩が取りに行ったケーキは秋限定のモンブランケーキだった。橙子さんの作ったケーキはやっぱり美味しい。

ケーキを食べた後は久しぶりにたくさん話をした。

さっきのセリフの続きはなかったけど、やっぱり真尋先輩と一緒にいる時間は楽しくてあっという間に時間は過ぎる。

そして帰り際、

『今なら勉強に集中出来そうだ』

真尋先輩は微笑みながら私にそう言った。
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