いつか咲う恋になれ
「大切な人……ねぇ」

自分で言っておいて疑問を持つ。椎野さんにに何故こんな事言ったのだろう。

大切な人と言って真っ先に思いつくのが穂花ちゃんだ。好きとかそういう恋愛的感情は分からないが、他の女子とはちょっと違う感情を持っている。

だから穂花ちゃんとの恋愛ごっこはカレカノってこんな感じかなと楽しんでいた。

でもこの感情が何なのかは……やっぱり分からない。

あ〜受験科目に『恋愛』って項目がなくて良かった。そんなのあったら俺は間違いなく0点だ。

さて椎野さんも帰った事だし、敦士に連絡入れとこう。携帯を取り出し、敦士に電話をかける。

「よう。もう話は終わったのか?」

「まあね。まだみんな生徒会室いる?そっちに戻ろうかと思うんだけど」

「いや、もう解散するからいいよ。お前が居なくなった後、紗倉さんの体調も悪化しちゃってさ。さっき有馬先生に送ってもらったとこだったんだ」

やっぱり穂花ちゃん、無理してたな。

「そう。なら俺もこのまま家に帰るわ。お疲れ様」

電話を切ると俺はハァっと息を吐き出し、今度は穂花ちゃんに電話した。

「も、もしもし」

「もしもしさっき敦士に聞いたよ。やっぱり体調良くなかったんだって?ちゃんと家でゆっくりしてる?」

電話越しの声も元気がない。大丈夫かな?

その後、話を聞くと家族もまだ仕事で県外に行ったままだって言うし、一人にするのも心配だからお見舞いに行く事にした。
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