【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
「そんときは俺も呼んでください。……男女二人だけでここの倉庫は、やっぱあんまり、外見良くないですよね? 部長」
棘のある言い方だ。
青木先輩以上の饒舌さで立ち向かう壮亮に呆然としている。
誰一人声を上げないまま、何も言わずに渡部長が踵を返したところで、ようやく詰まった息がほどけた。
壮亮の言葉は、あきらかに悪意のある返しだったと思う。苦笑していれば、「ブス、アホ」となぜかまた、暴言を吐かれてしまった。
「暴言……」
「柚、お前のオフィス戻るぞ」
「ええ? そうくんお昼……」
「買った。そこで食おうぜ」
なんだかんだと言いながらやさしい。
先に倉庫を出ていく後ろ姿に付き従って、渡部長に借りた鍵をかけなおした。
廊下には、コンビニのビニル袋が置かれていた。かなりの量が入っていそうだから、私の分も買ってきてくれたのだろう。
「柚、鍵は俺があいつにつき返すから貸せ」
「ええ?」
「いいから、黙って聞いとけ」
「うん、わかったけど」
差し出された手に引き渡して、一緒に来た道を戻る。役員室が置かれているフロアは、さっき出てきたとき以上に閑散としていた。
自室に入って、とくに断りもなく置かれているソファにどかりと座り込んだ幼馴染に苦笑してしまった。
こんなにも大胆に座り込む人も多くない。橘専務なら、いつも丁寧に座り込んでいるから、新鮮な感覚だった。