【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】

ぴたりと視線がぶつかった。

コートを着たまま、ドアの近くで立ち止まってしまっている。驚きというには足りない、すこし感情が抜けてしまったような顔をしていた。

橘専務は、私にあてていた視点を軽く逸らして、すぐ隣の壮亮に向ける。勘違いさせると思ったのは一瞬で、けれど、弁明しなければいけないものなのかどうかが疑わしい。

私と遼雅さんは、ただの契約結婚の関係だ。

お互いにメリットがあるから、そばにある。でも、遼雅さんも園部さんのことがあったときに、否定をしてくれていたから、私もそうするべきなのだろうか。

ぐるぐると考えだけが回って、壮亮の手がぱっと頭から離れてしまった。


「柚、じゃあまた来週な」

「え、あ……」


束の間に沈黙があって、裂くように壮亮が言った。

私を見つめる目はいつも以上にやさしい。きれいに笑っていると言っても良いくらいだ。

静かに頷いたら、テーブルの上に置いていたビニル袋を渡される。


「ん、それ食えば? 今日忙しんだろ?」

「うん? いいの?」

「プリン、柚のために買ったんだよ」

「あ、りがとう……?」

「はいはい、じゃあまたな」


壮亮は、他のことを問うたり、否定したりする隙を与えない。
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