【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
無意識に笑ってしまっているのかもしれない。
冷静そうだとか、何を考えているのかわからないというのは、中学校以降に出会った人たちから言われるようになった。
だけど本質はすこしも変わっていないから、いまだに姉には泣きついてしまうし、お菓子を食べると頬が勝手に笑ってしまう。
少ない枚数のお皿を片付け終えて、冷えた両手でぺたぺたと頬を触ってみる。
まぬけな顔を、見られてしまっただろうか。心配しているのに、遼雅さんはあまい瞳をいっそう柔らかくして、やさしく私を見つめてくれる。
「かわいいなあ」
「でれでれしていますか? はずかしいです」
「あはは、かわいいから、もっとよく見せてください。……それに、お姉さんと一緒にいるときの柚葉さんは、もっとにこにこしていましたよ」
「えっ、やっぱりでれでれしているのがわかりますか? 萌お姉ちゃんの前では、どうしても妹になっちゃいます」
俯こうとしたら、タオルで水気を拭った遼雅さんが、いつもよりすこし冷えた指先を、私の頬に寄せてくれる。
頬に触れている私の手の上を沿うように、大きな掌がやさしく、ぴったりと寄り添った。
手の甲に触れる熱は、すぐにほどけて、ひとつの体温になる。遼雅さんは、私の瞳を上から覗き込んで、いつも以上にあまく、きらきらと笑っていた。
「俺にもあまえてください。お姉さんに負けないくらい、柚葉さんが落ち着ける場所になりたいです」