【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
「ふふ、もう。遼雅さん、真剣に見てくれてない」
「うん? 俺はいつも真剣に見つめていますよ」
「それは、またすこし恥ずかしいです」
「恥ずかしがりなところもかわいいから、結局惹かれて釘付けになる」
「もう、」
「キスしたい」
細やかな声に目を見開いてしまった。
私の感情なんて置いてけぼりで、遼雅さんの唇に触れられる。脈絡のない触れあいにもう一度呆然としてしまった。
「やっぱりかわいいです。……さっき、帰り際に駅前でケーキを買ってきました。食べませんか?」
「え、あ、ケーキ?」
「うん。前に買って帰ってきたら、柚葉さんが大絶賛してくれたから。通ったときに思いだして」
「ええ、あ、りがとうございます。……あ」
「うん?」
「そうくんからも、お昼にプリンをもらったのに、すっかり忘れて会社に置いてきちゃいました」
帰りはとにかく急いでいた。
お買い物をしようとばかり考えていたから、つい忘れて秘書課の冷蔵庫に入れっぱなしにしてきてしまった。
月曜には賞味期限が切れてしまいそうだ。がっくりと肩を落としたら、遼雅さんがまたおかしそうな笑い声をあげていた。
「柚葉さん」
「はい」
「今日は俺が買ってきたもので、我慢してくれませんか?」
「がまんなんて、そんな。……ありがとうございます。うれしいです」
「よかった。それじゃあ持っていくから、ソファで待ってて」