【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】

「ゆずはさん」

「はい?」

「隣、良いですか?」

「あ、どうぞ」


隣を空けて座りなおせば、ぴったりと横に座った遼雅さんの熱がルームウェアごしに伝わってくる。

すこしおかしな気分になりそうで、慌てて目をそらした。


「おいしそうです」

「それはよかった」

「あ、れ?」


ショートケーキはいっとう好きだ。

以前遼雅さんが買ってくれたときも、ものすごくおいしかった記憶がある。

思わず顔がほころんでしまうのだけれど、1ピースしか持っていない遼雅さんの姿に首を傾げてしまった。


「半分に切りましょうか?」

「ああ、大丈夫。ホールで買ったから、食べたくなったらいくらでも食べて良いよ」

「え、と……? 遼雅さんの分は?」

「柚葉さんが食べる姿を見ていたいから、大丈夫」

「うーん、と?」


微笑みながら、フォークで綺麗に一口分をとった人が、ショートケーキのかけらを乗せたそれを私のほうに差し出してくる。


「りょうがさん?」

「たべてください」

「えと、私、自分で」

「今日はあまやかすって言いました」


隣のひじ掛けのほうへと身体を後退させれば、同じ分だけ距離を詰めてくる。

すこしからかうような瞳に困り果てて、観念して口を開いた。


「……ん、おいしい、です」


< 152 / 354 >

この作品をシェア

pagetop