【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
「ゆずはさん」
「はい?」
「隣、良いですか?」
「あ、どうぞ」
隣を空けて座りなおせば、ぴったりと横に座った遼雅さんの熱がルームウェアごしに伝わってくる。
すこしおかしな気分になりそうで、慌てて目をそらした。
「おいしそうです」
「それはよかった」
「あ、れ?」
ショートケーキはいっとう好きだ。
以前遼雅さんが買ってくれたときも、ものすごくおいしかった記憶がある。
思わず顔がほころんでしまうのだけれど、1ピースしか持っていない遼雅さんの姿に首を傾げてしまった。
「半分に切りましょうか?」
「ああ、大丈夫。ホールで買ったから、食べたくなったらいくらでも食べて良いよ」
「え、と……? 遼雅さんの分は?」
「柚葉さんが食べる姿を見ていたいから、大丈夫」
「うーん、と?」
微笑みながら、フォークで綺麗に一口分をとった人が、ショートケーキのかけらを乗せたそれを私のほうに差し出してくる。
「りょうがさん?」
「たべてください」
「えと、私、自分で」
「今日はあまやかすって言いました」
隣のひじ掛けのほうへと身体を後退させれば、同じ分だけ距離を詰めてくる。
すこしからかうような瞳に困り果てて、観念して口を開いた。
「……ん、おいしい、です」