【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
柚葉には、そういう勘違いをさせる魔力がある。

どこからどう見ても、相手を慕って、愛しているように見えてしまう。内心が追い付いていなくとも相手を勘違いさせるから、危険な麻薬のような女だと思う。


今回の柚葉は、しっかり相手に惚れてしまったらしい。完璧王子にここまではっきりと外堀を埋められてしまったら、誰もが敗北してしまうだろう。

柚葉はどうせ、外堀を埋められたとも思っていないのだろうが。

髪を撫でた男が、柚葉の耳に何かを囁いて、柚葉が頷いて去って行ってしまった。その後ろ姿をしばらく眺めた橘が、あっけなくこちらを振り返る。

全員が注目していたわけだから、もちろん目が合う。動揺一つなく微笑んで頭を下げた男が、颯爽とミーティングルームへと吸い込まれて行ってしまった。

牽制されたのだろうか。柚葉が自分のものだと見せつけにきたのだとしたら、あいつはいよいよ、一生逃げ出せないだろうと思う。


「え、マジで? シュガーちゃん、もしや橘専務と?」

「あ、そういや専務、似たような指輪してる……かも」


憶測が憶測を呼んで、騒ぎになり始めたところで部長が帰社してしまった。

柚葉にあんなところでイチャつくなと言ってやるべきか、それとも黙っておくべきか。


柚葉へのハラスメントが認められた渡の破滅を思い返して、携帯に伸びかけていた手を離した。


柚葉、お前は、本当に手に負えない。

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