【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
柚葉の世界は平等で、求められればつねに全力で誰かの力になろうとする。
「好きなのか?」
「……実は、契約結婚、なの」
「はあ?」
「遼雅さんもね、私のこと、好きなわけじゃないの。なんというか……。好かれすぎると、よくないんだって。だから、遼雅さんのことを好きにならない人と結婚したら? って言ってみて、採用された」
「それでお前が? 結婚するって?」
「はい」
「別居婚とか?」
「ううん。もう、お家は遼雅さんが決めてくれて」
「……おじさんとおばさんには、どう説明すんの?」
「あ、もう、挨拶してきたの。遼雅さん、かっこよかったよ」
それはもう、橘はお前のことが好きなんじゃないか。言葉にせずに蕎麦をすすって、水を飲んだ。
とんでもない男をひっかけている。
橘と言えば鬼の営業伝説を持っている男だ。
どんな厳しい条件でも数字を取ってくるやり手で、期待以上の結果を必ず持って帰ってくる。
あの爽やかな笑みの裏には、とんでもない手腕があるのだと聞いたことがある。
実際橘から営業のレクチャーを受けたことがあるらしい先輩からは「あれは才能だけじゃない、全部計算してやってる」と言われていた。
それくらい、簡単に打算が働く怜悧な男だ。