【12/18番外編更新】あまやかしても、いいですか?【完】
「りょうが、さん?」
「うん?」
私の声に相槌を打つ遼雅さんは、いつもとびきりあまい。
お仕事中では聞いたことがないくらいにやさしくて、迷子の子ども相手に話しかける人みたいだと思う。
お菓子みたいな甘さで、目が眩んでしまいそうだ。
「夢にも、りょうがさんが……」
「夢?」
夢の中の自分は、何を考えていただろうか。ふいに蘇って、思わず顔をそらしてしまった。
「なんでもないです」
「うん? 気になります」
「まちがえました」
「ううん?」
遼雅さんの胸に顔を押し付けて、必死で隠してみている。
中途半端に告げなければよかった。
頭が働いていなかったとしても、ひどい失態だ。困り果てていれば、上から笑い声が聞こえてくる。
「どうして笑うんですか?」
「あはは、今日の柚葉さんは積極的だなと思って」
「あ、」
あんまりにもつよくしがみつきすぎた。言われてすぐに思いついて、ひどく狼狽える。
離れようとすれば、後ろに回っている腕にあっさりと阻まれてしまった。
「俺は今からでも、いいですよ」
「う、ん? なにが、ですか」
耳の裏をやわく撫でられる。誘うような手つきに耐えきれず顔をあげて、遼雅さんの瞳のひまわりが、ちかちかと揺れているのが見えた。
「もう忘れちゃったんですか」
「う、ん?」