半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
 視線を返されないでいるサイラスは、少し考えてから、言った。

「その耳、触ってみてもいいか」
「は――はぁ!? だめに決まってるでしょっ、というか、やだ!」

 少し遅れて質問内容を理解し、リリアは咄嗟に獣耳を押さえ、彼の顔をバッと見た。

 やだ、という言葉を、サイラスが口の中で繰り返した。少しの間止まっていたかと思ったら、目をやや大きく開いたまま、ずいっとリリアの方に寄ってくる。

「なんだよ、減るもんじゃないだろ」
「減る! 確実にっ、私の精神的な部分が!」
「ふむ。もしかして弱点だったりするのか?」
「んな! ち、違うわよっ、弱点だったら普段から父様達に撫でさせてないしっ」

 勢いで言った途端、リリアは『しまった』と思った。

 サイラスが、どこか思案するようにしてじーっとこちらを見ている。考えが読めないけれど、ほぉ、だとか、へぇ、だとか思っていそうな気がした。

「あの、えっと、私は別に、甘えてるわけじゃないんだからね……? その、褒められて撫でられるなんて、普通にあることでしょ……?」

 よその家事情は知らない。多分、うちとそんなに変わらないと思う。
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