半妖の狐耳付きあやかし令嬢の婚約事情 ~いずれ王子(最強魔法使い)に婚約破棄をつきつけます!~
「〝ペン〟と〝紙〟、〝置き台〟」

 リリアが口にすれば、ポンッとそれらが目の前に現われた。

 妖術というのは便利だ。化かしの能力ではあるが、小さいもの、軽いものであれば、こうして最低限の欲しい物を具現化することができる。

 空の上、リリアは憤りをぶつけるように手紙を書いた。


【婚約を続けるのは無理です。破棄してください。

 あなたは『最強の魔法使い』の称号を得て、誰にも負けず魔法使いのトップに居続けています。魔力もほぼコントロールしつつある今、もう、私というお飾りの婚約者は、必要ないかと思います。

 ですので、この婚約、破棄させてください……】


 なぜか、不意にぽろぽろと涙がこぼれた。

 呆気ない終わりだったなと思う。当初の考えでは、自分は、盛大に婚約破棄を叩き付けてやるのではなかったのか。

 それなのに今、リリアはサイラスに顔を合わせる勇気が出なかった。

 ずっと迷惑だったのは、彼の方だったのだ。

「うぅ、なんで涙が出てくるのよっ」

 思えばリリアは、どうやって直接、この手紙をサイラスに届ければいいのかも分からない。王宮の彼の部屋なんて、知るはずもなかった。

 そう思ったら、とても切ない気持ちで涙が増した。
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