恋する少女漫画家
あたしのその言葉がよほど効いたのか、勇大は、「俺の古傷をえぐるようなこと言うなよー」と肩を落とし、しょげ返った。
あたしはケラケラ笑う。

そんなあたしたちのやり取りを見て、「江奈と勇大って、ほんといいコンビだよなぁ」と、亮二さんは顔をほころばせながら、しみじみ言う。

あたしは、「ちょっとやめて下さいよ」と口を尖らせる。

勇大は、亮二さんを羨望の眼差しで見つめながら、言った。
「亮二さんがうらやましいっすよ。雪乃さんが彼女なんて」


雪乃。


あたしはその名前を聞いて、無意識に視線を走らせた。

斜め先の方向。

少し離れた所にいる、彼女の相変わらず綺麗な横顔を見る。

女のあたしでさえ目を奪われるその容姿。

勇大はガッと身を乗り出して、雪乃さんに熱い視線を注ぎながら、「雪乃さんは絶対に腹黒くないっ。腹黒いわけがない!ど〜見ても真っ白!そーっすよね?」と、亮二さんに賛同を求めた。

亮二さんは、どう答える…?

あたしは緊張して、聴覚に意識を集中させる。
が、亮二さんはただ淡く笑みを浮かべて、笑うだけだった。

勇大の言ったことを認めたのか否か。亮二さんのその表情からは、全く読み取ることができない。
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