きみのこと、極甘にいじめたい。
飛び退いてキっと睨めば、馬鹿にするような目で笑っているじゃありませんか。


……っ、最悪だ。



「だれ、このイケメン!」
「モデルさん!?」
「素直の知り合い!?」



友達たちがきゃあきゃあと盛り上がり始めた。


「ちょっと! 素直! この人誰!? どういう関係なの!?」


ずずいとみんなに距離を詰められて、あたしの頭の中は真っ白になっていく。



「……じ、実は!」



「「「実は!?」」」


答えを、間違えられない。


ごくっと唾をのみ込み、冷静に……。



「俺とこの子はねー」



しれっと友達の目線までかがんだ彼が口を動かそうとしたその瞬間。



「……っ、し、親戚なのー!!!」



廊下に響くあたしの絶叫。




たぶん、あの人の声は、ちゃんとかき消せたと思う。




このイケメンは、春から親の再婚で同居することになった、血の繋がりなんてなんにもない、元同級生なんだ~なんて。




……絶対に、ばらすものか。




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