南の島のクリスマス(十年目のラブレター)
「冬ちゃん…どうしたの?その顔。」
「…」
「何かあったのよね?入ってもいい?」


     言葉など出てこない。
   それでもチーフに抱きついた。


そして…「怖かった…」ただそれだけが(しぼ)り出せた唯一の言葉。


 チーフは部屋にあがるとわたしをベッドの上に座らせようとした。それを払いのけるようにして部屋の隅で丸くなるわたしに言葉もなく「冬ちゃん」とだけ言うとまた、わたしを抱き締めて「もう大丈夫だから。電気()けていい?」と髪を()でてくれる。


 チーフが部屋の電気をつけコンビニ袋から缶コーヒーを出そうとしても、それを(さえぎ)るようにチーフに抱きついたアタシ。


「どうしたの?ねっ?…話して…アタシだったらいいでしょう?ね。」


 丸いテーブルの上に袋を置くとまたわたしを抱き締めて髪をそっと()れ物に触れるような優しさで撫でてくれる。


「ゆうべ…。」
「うん。」


一言出すだけで吐き気がする。


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