もふもふになっちゃった私ののんびり生活

 私も一度や二度なら身分証が無くてもおばあさんが代金から税を抜いてくれていたが、ずっととなるとギルドへの登録を勧められた。

 ただ私の場合はこの街に住居もないし、まだ子供なので登録するかどうか聞いてくれたが、私が身分証はあった方がいいだろうと登録を決めた。

 薬草を売れるのは、薬師ギルドと商業ギルド、討伐ギルドだから、まあ、選ぶなら薬師ギルドだよねぇ。絶対に討伐ギルドとかは私には無理だしね!

 一応門番さんに、布で口元を覆った方が咳が楽になること、それと咳止めをおばあさんの店で多めに用意していることを伝えておいた。


 そして街に入って最初に気が付いたのは、歩いている人の少さだった。
 少し前まで収穫祭の為に人が多かったから落差が大きく感じたのかもしれないが、でもそれ以上に少なく感じる。
 そして大通りを歩き、いつもの角を曲がるだけで何度もゴホゴホという咳をする声が聞こえた。

「……街を歩く時は、布か何かで口を覆った方がいいかもしれません。あとはこまめに、殺菌、うーんと目に見えないくらいに小さな埃も全て取り除くイメージで浄化を使ってみて下さい」
「わかった。清潔な布を用意しておこう」

 まあ、ヴィクトルさんは背が高いからそれ程飛沫感染の心配をしなくてもいいかもしれないけど、中にはヴィクトルさんよりも更に大きい人もいない訳ではないからね。

 肩に掛けた鞄から用意してきた布を引っ張り出し、口を覆うように首の後ろで結ぶ。

 少し不格好だけど、今はかまってられないよね。たった五日間の間でこれだけ増えているようだと、木枯らし病かは分からなくても飛沫感染する病気の可能性は高いよね。やっぱりおばあさんにも話してみよう。

「おや、ルリィちゃん。今日、来たのかい?なんだか具合が悪そうな人が多いみたいだから、気を付けるんだよ?」
「あ、女将さん!女将さんは咳とか大丈夫ですか?」

 ちょうど調味料の店の近くにさしかかった時、女将さんから声を掛けられた。
 口を覆っていた布を下ろして尋ねると。

「私は丈夫だからね!風邪だってろくに引いたことなんてないから大丈夫さ!ただうちの旦那が朝晩に咳が出ててね……。最近急に冷え込んで来たからかねぇ。お客さんの中にも咳をしている人が多いんだよ」
「旦那さんが……。それにお客さんにも。おばあさんのお店には咳止めをたくさん用意してあると思うから、酷くなる前に買いに来てね。私も頑張って調合するから!」

 お客さんの中にも多い、ってことは、だいぶ流行りだしているのかもしれない。頑張って薬を用意しないと!咳止めで治れば木枯らし病を発病しない可能性もあるしね!とりあえずは咳止めと風邪薬かな……?

「まあ!ルリィちゃんが作った薬なら、皆喜んで買って飲むだろうさ!あんまり酷く咳き込んでいるお客さんには、薬屋を勧めてみるかねぇ」
「ありがとう、女将さん!女将さんも、くれぐれも気を付けてね」
「ああ、ありがとうよ!今度はルリィちゃんも買い物に来ておくれよ!」
「はい!また買いに来ます!」

 女将さんに手を振って別れると、足早におばあさんの薬屋を目指す。その途中で隣の宿が目に入り、アイリちゃんの様子を聞くべきかと悩んで足が止まってしまった。
< 100 / 124 >

この作品をシェア

pagetop