もふもふになっちゃった私ののんびり生活

 あと、この結界内には、私に害をなすような魔物や獣は入れないのだろとこの間のことから予測しているが、小動物や害のない虫などは普通に生活していた。

 ある日、あたたかな陽ざしにつられてついふらふらといつもは行かない方向へ歩いてると、いきなり視界が開けた。
 そこは木が五、六本分空いている場所だったが草花が群生し、うららかな陽ざしの中を花の蜜を求めて蜂や蝶のような虫が飛び交っていた。

 その光景になんだかいてもたってもいられなくなり、衝動のまま蝶に向かって飛び跳ねながら私の背丈よりも高い草むらの中を夢中になって走っていた時、ガサガサという草をかき分ける音と共に、ふいに横から今の私よりも更に小さな鼠が飛び出して来たのだ。

 鼠に気づいた私と、私に気づいた鼠、お互いにビックリとして硬直していたが、我に返ったのは野生の差か鼠の方が早く、あっという間に草の間に消えて行った。

 その時、自分以外のもふもふとした獣の姿に私はたぎるだけだったが、ふと小さな鼠にとっては私は捕獲者なのではないか?としばらくしてから気が付いた。

 確か、肉食の動物は最初は小さな鼠とかは母親の監視の元、遊びで追いかけまわしながら狩りを覚えるんじゃなかったっけ?でも、鼠を見ても狩猟本能は刺激されなかったし。

 食べられる物は本能で感じるが、あの鼠を見ても食べ物だとは思わなかった。私の意識がまだ人間だったころままな影響だということも考えられるのだが。

 やっぱり私、なんか普通の子犬とは違うのかな?

 そう思いながらも、また目に入ったヒラヒラと舞う蝶の姿につられ、本能のまま飛び跳ねていた。

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