もふもふになっちゃった私ののんびり生活

「キャンキャンッ!!キャフーッ!」

 さっきまでは無かったのに、台所の椅子の傍にちょこんとどう見ても犬用のふかふか、もふもふなベッドが置かれていた。

 うっわー、手紙を読んだ初回特典で要望も聞いてくれるなんて、なんて素敵な親切仕様。神様、どうもありがとうございます!毎日拝みます!

 もふもふの縁取り付きのふかふかベッドにうれしくなって、つい周囲をスキップしながらキャンキャン鳴いてしまった。
 そっと横たわってみると、とっても柔らかくて暖かくて。うっかりそのまま目が閉じそうになるが、ブンブンと頭を振って眠気を飛ばす。

 危ない危ない。なんとなくこの特典は今だけな気がして来た!続きを読まないと!

 よし!と気合を入れて前脚を振り回してから紙の元へと戻り、続きを読んで行くと。

 ずっと疑問に思っていたこの場所の説明もあった。この土地は、あの大木を中心に大木の魔力を使って結界を張ってあるそうだ。
 この結界は生物に害意を持つ者は人でも獣でも入れないが、草食なら獣でも入れるそう。ただ虫は例外で、虫を食べる雑食の動物は入れるようになっているとのことだ。

 そしてこの世界には世界樹はなく、あの大木は魔力を生み出す特殊な木で精霊樹だそうだ。
 精霊樹は世界各地の深い森の奥地に一本ずつあり、世界中の魔力を生み出しているから、これだけ広い範囲を結界で囲めているらしい。

 ふむふむ。あの結界はそんなに細かく設定してくれていたんだね。ありがたい。……あれっ、でも、特別な木には変わりがないような?ここもやっぱり深い森の奥地だったしね。

 ただ、一番近い街の方面に結界を広げてあるので、私がある程度成長してシルビィーとしての能力を使えるようになれば問題なく森を出入りすることは可能らしい。

 そして最後に、やはり神様と連絡をとれるのは今回が最後だけど、その分この家には様々な物を用意したので、この世界をゆっくりと楽しんで欲しい、とあった。

 ふふふ。前世では、最後は楽しいっていう気持ちなんてすっかり忘れていたけど、ここでは何をやっていても楽しいです。本当に、転生させてくれてありがとうございました。

 そう、心で神様に感謝の言葉を呟くと、目の前でふんわりと優しく光った紙が、次の瞬間には消えていたのだった。


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