もふもふになっちゃった私ののんびり生活
自分の身体の中を巡る、いや、自分の身体を形どっている魔力を認識したと同時に、今の四つ足の獣の姿ではない、前世の二本足で立っていた頃のことを思い描いてみる。すると。
ぽうっと身体が温かくなったと思ったら、気づくと視点が上がり、立っている後ろ脚がしっかりと根っこを踏みしめていた。
そっと目を開けると、もふもふの毛皮に覆われていない手があった。まあ、裸なのは元々服を着ていなかったのだから今更だ。
おおっ!これは成功したんだよねっ!
「やっちゃぁ!!……っ!あ、あれ?」
思わず木に抱き着いていた手を放し、バンザイしながら歓声を上げた。その拍子にバランスを崩して転がって頭を打たないように尻もちをついてしまった。
でも、驚いたのはそこじゃないのだ。
私は日本語で話したつもりだったのに、甲高い幼い声が紡いだのは耳慣れない音の羅列だったのだ。それなのに、その音の羅列はこの世界の言葉だと頭できちんと理解できていたのだ。
「こ、これがおやくしょくの、言語、チートってやちゅ?」
本当に細かいところまでのサポートが素晴らしいです、神様!
違和感はあるが、それは声も身体も何もかもがそうなので、その内慣れて来るだろうと開き直る。今の一番の問題は、この姿も鏡で確認したいのだが、この精霊樹のところから家まで歩いて行けるだろうか、ということだった。
「うんしょっと」
そのまま座ったまま足を延ばしてみるが、根っこは大きくて地面に足が届かなかった。
そこでえいっと思い切って飛び降りてみたら、見事に着地できずにバタンと前に倒れてしまった。でも、ここは草原で木の根の周りにも柔らかい草が生い茂っていたので、思ったよりも痛みはなかった。