もふもふになっちゃった私ののんびり生活
「ううう……」
よいしょとぷるぷるする腕で身体を持ち上げ、お尻を地面につけたお座りの態勢になると、手で身体についた汚れを払う。そこで無意識に尻尾を動かしていて、今更ながら尻尾があることに気がついた。
そのまま耳にも手を伸ばしてみるともふもふの毛並みがあって、これはまさしく獣人状態だ!とテンションが上がった。
そのテンションのままよいしょと立ち上がり、緩やかな坂を下りようと一歩を踏み出すと。
「キャウッ!!」
バランスを見事に崩して今度はコテンと転がって見事な前転をした。
まあ、一歳とちょっとの幼児が初めて歩くのに尻尾もあるしバランスなんてとれる筈も無かった。
もう、このまま前転して転がって行った方が早いな……という誘惑に乗りそうになったけど、このままではいつまで経っても家に戻れそうにもないので諦めて四つ足の姿に戻ることにする。
さっきのことを思い出し、目を閉じて体内の魔力を意識しながら四つ足の姿を思い描く。するとすんなりと元の姿へと戻っていた。
尻尾があったから、四つ足の姿の方が思い描き易かったのだ。
まあ、この一年ずっとこの四つ足の姿だったし。今ではこっちの姿も違和感ないものね。それにこの姿の方が気楽だし!
うーんと思いっきり伸びをしてからポテポテと丘を降り、家へと向かう。その途中でついでに夕食にと果樹の果実を食べた。三種類もあるから飽きないので、またたくさん食べてしまった。
しっかりと口の周りを果汁の味がしなくなるまで舐めて毛づくろいをし、薄暗くなって来た中を家へと戻った。
キイと扉の下の小さな扉をくぐり中へ入ると、もう薄暗くて夜目は効くが部屋の様子がわかりづらい。姿を鏡で確認するのは明日にすることにして、そのまま一直線に神様が用意してくれたふかふかの小さなベッドへ向かう。
でも、寝る前に。
神様。私の為に色々とありがとうございます。のんびりしながらゆっくりと神様が用意してくれたこの家の物も色々使ってみようと思っています。
その場で五体投地してとりあえず神様に祈ってから、ベッドへと寝そべり、落ち着く場所を見つけると丸まって安心して眠りについたのだった。